「台湾旅行法」で米中台関係がどう変化するか

2018/03/19 更新: 2018/03/19

米トランプ大統領は現地時間16日、米台全レベル高官の相互訪問を促す「台湾旅行法」に署名し、同法が発効した。同法に基づき、蔡英文総統の訪米とトランプ大統領の訪台が可能になる。

同法の成立を受けて、台湾高雄市の陳菊市長は18日、市政府代表団を率いて訪米した。陳市長は、台湾地方政府の首長として、初めて米国入りした。市長は米シンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」に招かれ、20日にCSIS主催の世界の女性指導者をテーマにした講演会に出席する予定。

米メディア・ボイス・オブ・アメリカ(VOA)によると、前ブッシュ政権で国務副長官を務めたリチャード・アーミテージ議員らは、米台首脳会談の開催を呼びかけた。議員らは、シンクタンク「プロジェクト2049研究所(Project 2049 Institute)」が16日掲載した調査報告書のなかで、米台双方の最高レベルの閣僚が定期的に交流し、両軍の合同軍事演習も実施すべきだと提案した。

中国が猛反発

一方、中国当局は米「台湾旅行法」の正式発効に反発を強めている。

外交部の陸慷報道官は17日、同法について「法律的な拘束力がないが『一つの中国』の原則に違反し、『台湾独立』の分裂勢力に誤ったシグナルを発することになる」と米側に抗議し、「過ちを正すよう」と要求したと述べた。

国防部の呉謙報道官も、同法が「中米両軍関係の発展に害を与えた」とし、米台軍事協力の停止、米国の対台武器売却撤廃などを要求した。

中国共産党機関紙・人民日報傘下「環球時報」は17日の社説で、「台湾旅行法」の成立で将来、米中関係に「曲折と激震」をもたらし、緊張が一段と強まるとの見方を示した。

また、同紙によると、中国政府系シンクタンク、中国社会科学院米国研究院の袁征研究員は、「台湾旅行法」の正式発効で、米中関係の政治的な礎が崩れつつあるとして、「1979年米『台湾関係法』の立法以降、台湾問題をめぐる米政府の最大の変化だ」と述べた。

中国けん制のための「台湾旅行法」

国立台湾師範大学の範世平教授は米VOAに対して、米国内法である「台湾旅行法」は法的拘束力がないため、象徴的な意義が大きいとの認識を示した。台湾の中国文化大学の陳一新教授は、米政府は「台湾旅行法」を通じて、中国当局をこれまで以上にけん制できると指摘した。

中国当局が2016年、米軍が南シナ海で中国海軍の動きを監視していたことに強い不満を持っていたため、米原子力空母「ジョン・C・ステニス」を中心とした艦隊の香港の寄港要請を拒否した。

陳教授は、「米政府は今後中国に対して強い不満がある際、同法に基づき、海軍艦隊の台湾の寄港や高官の訪台を手配する可能性が高い。『台湾旅行法』は、軍事・外交における米政府の切り札になる」と語った。

台湾への締め付けをさらに強める

現在米中関係はすでに、トランプ政権の対中の強硬姿勢で悪化した。米国は、米中貿易の不均衡で中国製品に対して追加の関税措置を実施し、「一帯一路」経済圏構想に対抗して「インド太平洋戦略」を強化している。

陳一新教授は、「中国当局は、外交辞令で強く反発しているが、実際の対策はない」と指摘した。

また、「習近平国家主席は、米中関係のさらなる悪化は中国に不利益だと認識しているため、中国は対米報復措置を行わないだろう」と推測する。

陳教授は、中国当局は対米の不満のはけ口として、台湾への締め付けをさらに強めるとみている。「まず、台湾との国交を持つバチカンや中南米国に対して、台湾との断交を働きかけるだろう」

範世平教授は、「中国当局が台湾への締め付けを強めれば強めるほど、台湾市民の反感も高まる。台湾市民は、中国当局が掲げる対台融和政策がただのスローガンに過ぎないとはっきり認識するようになるだろう」と話した。

(翻訳編集・張哲)

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