【紀元曙光】2020年7月2日

今日という日を、生きていかねばならない。
香港市民にとっても、それは同じである。普通に生きていくことが、この世の不条理に対する最も強いレジスタンスとなり、それが必ず、最後の勝利へつながる。
周庭(アグネス・チョウ)さん。日本のアニメが好きで日本語を覚えたというが、日本メディアのインタビューに対して、見事な日本語で答える力量には驚くばかりである。単に言葉が流暢というのではない。伝えるべき内容を厳選して、的確に相手に伝えようとする周さんの魂の日本語に、私たち日本人はもっと耳を傾け、真正面から向き合うべきではないか。
▼香港の若者が闘ってきたこの1年を、日本人は決して忘れまい。同じ程度の覚悟を、今の日本国民がもてるかと問われれば、恥ずかしながら誠に心もとない。国を守る気概は、蛮勇ではなく、故郷を愛する魂の強さではかられる。細身の、どう見ても柔和で美しいお嬢さんである周庭さんには、暴風にも折れない若竹のような強さがあった。
▼その周さんが6月30日、香港の民主化を求める政治団体「香港衆志」からの脱退を表明した。それで良い。身辺には十分注意していただきたいが、そうやって生き抜くことが悪魔は最も恐れるのである。
▼「国家安全法」というのは、もともと中国本土で、共産党にとって邪魔なものを不当逮捕するための方便にすぎない。その根底にあるのは、中共が慢性的にもつ「怯え」の心理である。びくびくしているのは、実は中共なのだ。それを香港にも適用できるようにした暴挙は、中国共産党の終焉を早めたことに他ならない。