【紀元曙光】2020年6月20日

日本には、「ぬか漬け」という見事な一品がある。
▼キュウリやナスなど、旬の夏野菜が安定価格で店頭に並ぶ。それだけで、日本は良い国だと自慢してよい。都市封鎖された2月あたりの中国武漢など、ひどいものだった。市内に入る野菜はわずかな上、中間業者や城管(暴力的な治安維持組織)がからんで50倍の値段に跳ね上がった。腐りかけのクズ野菜が、である。
▼新鮮な野菜を、味に深みのある「ぬか床」に漬ける。その時から、待つ時間が楽しい。恥ずかしながら、小欄の筆者も数年物の「ぬか床」をもっていて、自分で手入れしながら続けている。冬場なら沢庵漬けもできる。中国出身のうちの奥さんには、触ることを許さない。
▼話が、とぶ。中国人に言わせると、中国は五千年の歴史をもつそうだ。日本人が「中国は4千年でしょ」というと、相手は必ず怒る。彼らが民族の背骨とする中国伝統文化は、多分に精神の要素がつよいので、三皇五帝の神話を含む「五千年」でなければならない。出土文物による実証的な考古学とは、全く異なるのである。
▼「日本の歴史はどのくらい?」と外国人観光客に聞かれて、「初代の神武帝即位から数えて2680年です」と即答できる日本人は、今日では、多くないだろう。学校の歴史教科書も、神話を避けて、縄文弥生である。むしろ筆者なら、国語の授業で、『古事記』の国生みから天孫降臨、ヤタガラスに導かれての神武東征などをやってみたい。もちろんカリキュラム上、許されないだろうが。
▼さて、今の日本人は、民族の精神の「ぬか床」を、どれほどもっているか。(次稿に続く)