【紀元曙光】2020年5月20日

都会にいる子どもが、自然の生物に触れる機会は、どれほどあるのだろう。
▼小欄の筆者は東京の葛飾区の出身だが、50年ほど前は、近所の住宅の間に小さい水溜りがわずかに残っていた。そんな水辺で、アメリカザリガニを釣るのが面白かった。赤い大物をマッカチンと呼んだ。たこ糸にスルメを結んで獲物の前に垂らすと、両手のハサミでつかんでくる。水面すれすれまで上げて、後から網ですくった。
▼その痛快さは、経験のある人だけ、ご賛同いただけよう。ヒキガエルなど大型のカエルは、田舎なら珍しくもなかろうが、東京の子どもにとっては、見つければ声を上げて驚く宇宙生物として存在した。池のある大きな公園などで、水中よりも、森の地面をゴソゴソ歩いていたように思う。
▼ヒキガエルを蝦蟇(ガマ)とも呼ぶ。語源は、よく分からない。「ガマの油」という膏薬の実演販売を、同じく50年くらい前に見たことがある。薬売りの男は、やかましい口上の後で、売り物の膏薬を、最前列にしゃがんでいた筆者の左手の甲に指で塗った。さらに、隠していた木綿針を、いきなりそこに突き立てた。びっくりしたが、不思議と痛くはない。
▼「な、痛くねえだろ」と、自分が刺した針を指ではじく薬売り。確かに麻酔作用はあるらしい。今ではとてもできない宣伝方法だが、当時は、大らかだったのだろう。
▼ヒキガエルの類を中国語では「蛤蟆(ハマ)」と言う。中国では、それに酷似している江沢民への最大の揶揄として使われている。中共の醜悪なガマに比べれば、日本のヒキガエルは、よほど愛嬌があって良い。