アンデルセン童話の『裸の王様』。ある王国に二人の詐欺師がやってきた。自分たちは仕立て屋で、「愚か者には見えない織物」で見事な衣装を作れますよ、という。
▼それを聞いた王様は、だまされたとも気づかず、二人に衣装を作らせる。見えないと言うと「愚か者」になってしまうので、王様も、大臣も、民衆も、本当のことを口にできず、自分を偽って、見えるふりをしてしまう。
▼見えない衣装を身に着け、威風堂々とパレードをする王様。それを見た一人の子どもが指差して、「あの王様、裸だよ」。この一言が決定打となって、民衆は「裸の王様」の欺瞞性に気づく。ところが愚かな王様は、それでも気づかずにパレードを続けていく。
▼その子どもに王様からの刑罰が加えられなくて、ああ良かったと胸をなでおろす。これが今の中国だったら大変なことだ。なにしろ真実を口にすれば、本当に命がなくなる危険があるのだから。
▼おそらく武漢市民であろう。淡い黄色のウェアを着たその女性は、命の危険も覚悟の上で、語気鋭く、すさまじい発言をした。中国共産党の欺瞞性、腐敗ぶり、邪悪ぶりをとことん罵倒し、「自分を犠牲にしてでも私は立ち上がる。同胞よ、立ち上がれ!」と叫んだ。
▼3分間にわたる彼女の絶叫は、必ずや歴史の石段に刻されるだろう。その中にあった、次の言葉を今後のため記憶しておきたい。「武漢の肺炎は、政党内の争いのため、計画的に引き起こされた」。小欄の筆者が彼女の意を解読すると、「これは江沢民派の残存勢力が、習近平に仕掛けた攻撃だ」となる。さもあろう、と思う。