ゾンビのごとき邪悪の亡霊が、再び出現したのか。「抓四類」という言葉を、最近の中国語のなかに見つけた。日本語に訳せば「4種類の人間を捕まえろ」だが、はじめ筆者には、その意味が分からなかった。
▼筆者の遠い記憶では、この「四類」とは1950年代から70年代の中国で、狂気のように叫ばれた政治スローガンだったはずだ。社会主義「新中国」において、打倒すべき4種類の人間、つまり旧時代の地主、富農、反革命分子、悪分子(ごろつき)を指す。
▼これらに該当すると見るや(該当しない人であっても、加害側の実績づくりのため)片端から捕縛して、壇上に吊るし上げ、大群衆がこぞって激しい批判と罵倒を加えた。頭には紙製の三角帽子。首からは「罪状」のプラカード。すさまじい虐待を受けた被害者は、精神が崩壊して狂死するか、集団暴力によって虫のように殺された。
▼人民裁判や批判闘争大会など、過激な政治運動が実際に行われたのは、もう50年以上前のことだ。しかし邪悪の亡霊は、半世紀が過ぎても消滅しないらしい。
新型コロナウイルスによる肺炎が広がる現在の中国で、この「抓四類」が叫ばれている。4種類とは、新型肺炎の「確実な患者」「疑いある患者」「肺炎症状で熱のある患者」「確実な患者と濃厚接触した人」だと言う。
▼その現代版「四類」を強制的に隔離するため、文化大革命期を彷彿とさせるような、すさまじい暴力が公然と行われている。記憶に新しい例で言うなら、昨年の香港で警察が一般市民に加えたような惨劇が、いま中国本土にあふれているということだ。