米が中国企業の禁輸リスト追加、ウイグルなど弾圧に関与と判断

2019/10/08 更新: 2019/10/08

[ワシントン/上海 8日 ロイター] – 米商務省は7日、中国の監視カメラ大手、杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)<002415.SZ>や公安機関など28団体・企業を事実上の禁輸リストである「エンティティー・リスト」に追加した。中国政府によるウイグル族などイスラム系少数民族への弾圧に関与しているとした。

両国が閣僚級通商協議を今週に控える中、緊張の高まりにつながる決定で、中国が反発するのは必至だ。

同省によると、新疆ウイグル自治区政府公安局とその傘下にある19の政府機関のほか、営利企業8社がリストに追加された。企業はハイクビジョンのほか、浙江大華技術(ダーファ)<002236.SZ>や安徽科大訊飛信息科技(アイフライテック)<002230.SZ>、厦門市美亜柏信息<300188.SZ>、顔認証技術を手掛けるセンスタイムグループや北京曠視科技(フェイス++)が含まれる。

米政府高官によると、今週の米中通商協議との関連はないという。

商務省はこれら団体・企業は「中国によるウイグル人やカザフ人などイスラム系少数民族への抑圧や恣意的な大量拘束、ハイテクを使った監視を通じた人権侵害に関与してきた」と非難。ロス商務長官は「米政府と商務省は中国における少数民族への残忍な弾圧を容認することはない」と強調した。

エンティティー・リストに追加された企業・団体は、米政府の承認なしに米企業から部品を調達することができなくなる。

中国商務省は現時点で、ロイターの取材に応じていない。

センスタイムはAI(人工知能)分野のユニコーン企業で、2018年5月の資金調達時の評価額は約45億ドル。

フェイス++には、中国の電子商取引大手アリババ・グループ<BABA.N>が出資している。評価額は約40億ドルで、香港市場での最低5億ドル規模の新規株式公開(IPO)に向け準備を進めている。

ハイクビジョンの米国の広報担当者は、商務省の禁輸措置について「強く反対」するとし、同社が人権に関するコンプライアンスについて助言を受けるため、米大使を務めた経験のある人権問題の専門家を1月に起用したことに言及した。

同社は「このような取り組みにもかかわらず、ハイクビジョンを罰することはグローバル企業による米政府とのコミュニケーションを阻害し、ハイクビジョンの米事業パートナーに打撃を与え、米経済に悪影響を及ぼす」と指摘した。

ビデオ監視システムの調査会社IPVMの創業者、ジョン・ホノビッチ氏は、ハイクビジョンとダーファはともにインテル<INTC.O>、エヌビディア<NVDA.O>、アンバレラ<AMBA.O>、ウエスタンデジタル<WDC.O>、シーゲイト・テクノロジー<STX.O>といった米半導体・ハイテク部品大手の供給を受けているため、禁輸措置による「壊滅的な」影響が見込まれると指摘。アンバレラは商務省の発表を受けて、米株式市場引け後の時間外取引で12%急落した。

ロイターの8月の報道によると、ハイクビジョンの売上高500億元(70億ドル)のうち海外事業は30%近くを占める。

センスタイムは発表文書で、米政府の措置に深い失望の意を表明。事業の管轄区域における法律を順守しており、自社のAI技術について責任ある利用を確実にするため倫理規定の策定に積極的に取り組んでいると強調した。

アイフライテックは、リストへの追加による日々の業務への影響はないとしている。「すでに予測していた状況で、われわれは引き続き優れた製品とサービスを顧客に提供していく」という。

厦門市美亜柏信息は、海外の売上高は全体の1%未満で、サプライヤーのほとんどは国内企業だと説明した。

*内容を追加しました。

Reuters
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