中国伝統美徳物語(孝行編)その六「郯子は鹿の乳を搾り取る」

郯子(たんし)は春秋時代の人です。彼は両親のことを心から大切にしました。両親が年を取って両眼を失明したため、郯子はとても気にかけて何とかしたいと思いました。鹿の乳を飲めば目がよくなると人から聞くと、郯子は鹿の皮の服を借りてきて鹿に変装し、山奥に入り、鹿の群れに入り込み、鹿の乳を搾り取ろうとしました。猟師は1頭の動かない「鹿」を見つけて、矢を抜き出して打ち放そうとしました。

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その時、郯子はやっとそれに気づき、慌てて立ち上がり鹿の皮の服を脱ぎ捨て、大声で状況を猟師に説明して何とか撃たれる危険から逃れました。猟師は郯子の親思いの話を聞いて大変感動して、鹿の乳を彼にプレゼントしました。郯子はその鹿の乳を家に持ち帰って両親に飲ませると、両親の目が本当によくなりました。

その後、郯子は国の君主になりました。彼が治めた国はとても小さな国でしたが、しかし、かなり有名になりました。郯子の業績や才能、そして、彼の「仁慈」(じんじ・思いやりがあって情け深いこと)と「孝行」の徳行は民衆の心を勝ち取ったのです。

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郯子は国を治めるのに、「道徳」を重んじて仁義を施し、そのため、人々は彼に心から従いました。郯国は文化が発達し民の風は純朴で、一部の法令制度が長く守られ、後世にも深く大きく影響を与えました。

歴代の帝王は郯子の道徳心や才能、威厳や優雅さを大いにたたえ、郯子をそれらの象徴として見なしました。郯子が亡くなった後、後代の人達は郯子廟や郯子墓を作り、彼を祀りました。

関係資料の記録によると、当時、郯子廟には「三聖人」の像、即ち孔子、老子、郯子の像が作られて、祀られたそうです。これらからみても、いかに人々が郯子に対して尊敬の念を抱いていたか、その気持ちを伺うことができます。

(明慧ネットより転載)