香港デモ、立法会占拠は「当局の罠」との疑い

2019/07/03 更新: 2019/07/03

香港では1日夜、一部の市民が犯罪容疑者の中国本土への移送を可能にする「逃亡犯条例改正案の撤回を求めて立法会(議会)の前で抗議活動を行った後、立法会の庁舎のガラスを割って議場に突入し占拠した。しかし、抗議者らが突入する前、立法会の警備に当たっていた警官隊全員が突如、建物から撤退したなど3つの事象から、香港警察当局が意図的に抗議者に占拠させたという疑いが持たれている。

1.「空城の計」か

抗議者らが立法会に突入する前、警官隊は突如、議場から離れた。この動きを一部の報道関係者と市民は疑問視した。

香港警務処(警察)の盧偉聡・処長は、現地時間2日午前4時に開かれた記者会見で、当局が故意に抗議者に突入させたのではないかとの記者の質問を否定した。盧処長は、「抗議者は当時、室内の一部の照明を消し、警官隊に白い煙を帯びたものを投げ込んだため、警官隊はやむを得ず撤退した。抗議者は立法会奪還の策を練っていた」と説明した。

香港メディア「立場新聞」2日付によると、香港中文大学の周保松・副教授は盧処長の発言に異議を唱えた。「盧処長は、『抗議者の力が凄すぎて、警官隊がそれに対抗できないから、仕方なく立法会の守衛を放棄し退散した』というデタラメの言い訳をしたいだけだ」

実は、現地時間2日午前0時(日本時間2日午前1時)ごろ、香港の警官隊は催涙弾を発射しながら、主要幹線道路の龍和道、龍匯道と夏愨道から立法会の庁舎に向かって、抗議者を強制排除し始めた。

午前0時半ごろ、立法会の議場にいた抗議者はすべて建物の外に出た。午前0時50分ごろ、警官隊は政府庁舎が集まる金鐘(アドミラルティ)地区で再び催涙弾を放ち、立法会の建物の外にいた抗議者は全員排除された。全過程は1時間もかからなかった。

周副教授は、香港政府は6月12日の大規模な抗議デモで起きた武力鎮圧の責任を抗議者に押し付け、香港および国際社会の同情を得ようとする狙いがあると分析した。副教授は、香港当局のやり方は「卑怯だ」と痛烈に批判した。

2.事前に批判動画を製作か

抗議者が1日午後9時ごろ、立法会の庁舎に突入した後、香港警察公共関係科の謝振中・総警司は同午後10時20分にフェイスブックにスピーチ動画を投稿した。

謝・総警司は動画のなかで、抗議者を「暴徒だ」と批判し、暴力行為で立法会に不法侵入したと述べた。また、同氏は警察当局が今後迅速に強制排除に乗り出すため、これに抵抗する者に対して、「適切に武力を行使する」と警告した。

しかし、動画のなかで、謝・総警司が腕につけている時計をみると、午後5時ごろを指している。

7月1日午後10時20分、フェイスブックに投稿された香港警察公共関係科の謝振中・総警司のスピーチ動画(facebook.com/HongKongPoliceForceより)
謝・総警司の腕につけられている時計は午後5時ごろを指している(facebook.com/HongKongPoliceForceより)

一部の香港メディアと台湾メディアの「中央社」は、香港警察当局は抗議者らが立法会占拠の前に、すでに同動画を撮影していたのではないかと指摘した。警察当局は、事前に立法会からの撤退を計画し、故意に抗議者に占拠させたうえで、今後、「暴徒」や「器物損壊」の疑いで抗議デモに参加した市民に報復するとのシナリオを描き、「」を仕掛けた可能性が高いという。

3.「割れたガラスがすでに散乱」

立法会に突入した抗議者らとともに、立法会の内部に入った香港人記者の軻浩然(Ching Kris)氏は2日、フェイスブックで、抗議者らの立法会突入と占拠の全過程を記録した記事を投稿した。

軻記者は、「1日夜9時過ぎ、立法会の正門が破られて抗議者と立法会に入った」「入った瞬間に腐った卵の匂いがし、割れたガラスなどがすでに散乱しているのを見た。若者たちと報道関係者らは、続々と立法会に入り、エスカレーターに乗り、1階に行った」

軻記者によると、抗議者らは立法会に入ってから、破壊行為をしなかった。「ある抗議者が、何かの飾り物に触ろうしたが、すぐに別の抗議者に止められた。『私たちは占拠しに来たが、破壊しに来たわけではない』。抗議者らは、本棚などの家具に『壊すな』という張り紙を貼った」

「しかも、立法会の建物の地下にある食堂でも同じことが起きた。抗議者らは冷蔵庫にある飲み物を取り出して飲もうとし、代金をきちんと置いた」

軻記者の投稿に対して、一部のネットユーザーは、「抗議者が立法会に突入する前に、すでに誰かが割れたガラスを置いたのではないか」「(当局の)自作自演の政治的なスペクタクル映画だ。若者を利用したのだ」「政府が抗議者の破壊行為を見込んで、抗議者を立法会に突入するよう導引した。これは、政府に向ける市民の批判の目を逸らし、若者をやり玉に挙げるためだ。若者がその罠にはまってしまった」との見方を示した。

軻記者は記事で、「この日の夜、私は若者たちの『暴動』を全く目にしなかった。私が見たのは、香港の将来のために自分たちを犠牲しようとした若者たちだ。彼らは、夏休みの楽しい旅行や恋人とのデートを取りやめ、将来、報復されるかもしれないという恐怖を克服して、われわれ大人たちが守りきれなかった香港の将来を守ろうとした」と綴った。

(翻訳編集・張哲)

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