タンザニア大統領、一帯一路1兆円港湾計画を停止「狂った人にしか受け入れられない条件」

2019/06/29 更新: 2019/06/29

アフリカの国タンザニアは、国の財政状況を理由に、中国共産党主導の1兆円規模の港湾建設計画を中止した。インド洋に面したバガモヨに建設するこの大型新港は、アフリカの物流に関わる一帯一路計画の一つだった。

この新港は、習近平中国主席が5年前、タンザニアを訪問した際、同行した中国の大手国有企業グループ・招商局集団の傅育寧会長とムギムワ財務相が合意した計画。中国側は、港湾までの周辺道路のインフラ建設も担当する内容だった。しかし、当時のジャカヤ・キクウェテ大統領が2015年11月に退任後、後任のジョン・マグフリ大統領は同計画を重点プロジェクトから外した。

ジョン・マグフリ大統領はこのほど、現地メディアの取材に対して、同計画を強く非難した。資金調達と引き換えに中国から「搾取的で不合理な」内容を提示され、中国金融機関が「狂った人間にしか受け入れられないような厳しい条件」を設定したという。

「中国側は33年の抵当権と99年のリース権を求めてきた。港が稼働後、投資者の選定に私たちは干渉することができない。彼らは、この土地を自分のものにしようとしている。さらに、私たちは港湾の工事費を負担しなければならない」と大統領は述べた。

6月中旬、タンザニアの港湾局長は、この中国投資のバガモヨ港に関する報告を行った。それによると、中国側はタンザニア政府に対し、港湾事業の損失や土地税、労働者補償税、技能開発課税、関税、付加価値税を含むいくつかの免税を求めていた。

いっぽうで、港湾稼働後の税の計算、監査はすべて中国当局が行う権利があるという。「つまり港湾、貨物、物流を含め、すべてをコントロールすることを可能にする条件だ」と報告書は説明した。

タンザニア当局は現在、主要港のダルエスサラーム港の受け入れ貨物を3倍にする拡張工事を行っている。その工事費は5億2200万ドルとされる。大統領は、中国主導の巨大なバガモヨ新港は、この既存港の取引を損なう恐れがあると懸念している。

「この巨大な港を建てたら、北部タンガから南部ムトワラまで他の港を建設してはいけないとまで要求してきた」マグフリ大統領は6月14日、大統領官邸でのビジネスリーダー代表団との会合で、不満を述べていた。

バガモヨ新港は、タンザニア国内の貨物だけでなく、近隣の内陸国であるザンビアやコンゴ、ルワンダの海の玄関口として活用する計画だった。主要なダルエスサラーム港の20倍近くを取り扱うほどの巨大港湾計画だ。

元世界銀行の輸送担当主任アニール・バハンダリ(Anil Bhandari)氏はメディアのインタビューで、新港の計画案は「大きすぎるし、既存の主要港には近すぎる」として、持続可能ではないと否定的に見ている。

東アフリカケニア、ウガンダ、ルワンダなどの政府機関と開発した地方港が活用されている」 「この地域の物流戦略は、市場の流れを分割することが適切だ。(巨大港の維持は)現実的には不可能だろう」と述べた。

中国政府は、まだバガモヨ新港計画の中止に関してコメントしていない。

(編集・佐渡道世)

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