【子どもに聞かせたい昔話2】 藍染めの桶に落ちたジャッカル

昔々のインドの話です。ある夜、一匹のジャッカルが食べ物をさがしながら村はずれをぶらぶらしていると、あやまって藍染めの染料が入った大きな桶の中に落ちて、出られなくなってしまいました。

翌朝、染め物職人が仕事をしにやってきました。ジャッカルが死んだふりをしてじっとしていると、染め物職人は彼をつまんで地面に放り出しました。ジャッカルは桶から出るやいなや、 一目散に森に逃げ込みました。

森にたどりつくと、ジャッカルは自分が青色に染まっていることに気づきました。「しめしめ、このチャンスを利用しない手はないぞ」とひそかに考えました。

彼は仲間のジャッカルを集めてこう宣言しました。「この青い毛の色を見よ! 森の神は俺様をこの森の王に選ばれたのだ。今日からお前たちは俺様の命令に従え」

他のジャッカルたちは彼の奇妙な青い姿に恐れをなし、うやうやしく頭を下げて「王様のおおせの通りにいたします」と彼に従うしかありませんでした。

時がたつにつれて、森にすむ他の動物も青いジャッカルを王様とみなすようになり、やがてライオンやトラでさえも彼に従うようになりました。するとジャッカルはますます思い上がり、仲間のジャッカルを寄せつけなくなりました。

長老のジャッカルはこの様子を見かねて他のジャッカルに言いました。

「落ち込むことはない。このようなひどい仕打ちを受けて黙っていられるものか。あのニセモノをひとつこらしめてやろう。ライオンもトラも見かけに惑わされてアイツがただのジャッカルにすぎないことが分からず、やつの言いなりになっているに過ぎない。本当のことを分からせるときが来たようじゃ。

わしにいい考えがある。今夜みんなで一緒に遠吠えしたら、あのニセモノもきっとつられて遠吠えするに違いない。見た目は変わっても中身はわしらと同じただのジャッカルじゃ」

その夜、ジャッカルたちが集まって遠吠えを始めると、やはり青いジャッカルも生まれついた通りに遠吠えを始めてしまいました。ついに化けの皮がはがれたのです。

ライオンもトラも他の動物たちも、ようやく自分たちがだまされたことに気づき、青いジャッカルに襲いかかりました。ジャッカルはほうほうのていで逃げていきました。

長老のジャッカルはこれを聞き、うなずいて言いました。「他の者をだましても、なんの得にもならん。最後に真実が現れるのじゃ」

(Ancient Tales of Wisdomより)
(翻訳編集・緒川)

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