「国益に反する」豪、長江基建の天然ガスパイプライン買収案を一転拒否

2018/11/21 更新: 2018/11/21

オーストラリアのフライデンバーグ財務相は11月20日、香港のインフラ企業・長江基建集団による同国の天然ガスパイプライン管理大手APAグループの買収案を拒否したと発表した。財務相は、買収案はオーストラリアの国益に反すると説明した。

現地メディアABCによると、長江基建に買収をもちかけられていたAPAグループは、国のエネルギーとして最も重要なガス輸送産業を管理する大手企業。

APAグループはガスパイプラインを1万5000キロ所有する。これは同国の56%を占めており、ニューサウスウェールズ州とビクトリア州の74%のパイプラインが含まれている。

2018年6月、香港の長江基建が130億豪ドルでAPAの買収を提案した。オーストラリアの競売・消費者委員会は9月、この買収を承認したが、フライデンバーグ財務相は「外国資本による所有権の集中」に政府は懸念を抱くとして、問題性を指摘していた。11月20日、同財務相は国益に反する取引であるとして正式に拒否を発表した。

長江基建は、すでにオーストラリアにおけるガス・電気産業を担う企業で、何百万人ものオーストラリア人が利用するインフラサービスを提供している。

フライデンバーグ財務相は引き続き「国益を侵害しない」投資を歓迎すると述べた。

オーストラリアのシンクタンク戦略政策研究所(ASPI)ピーター・ジェニングス氏は、長江基建によるAPA買収計画はオーストラリアの主要エネルギーインフラの権利が明け渡されるとして、公然と批判してきた。「オーストラリアの多くの主要インフラ事業や施設が、中国企業や中国政府の影響を大きく受ける企業により掌握されている。これは国の致命的な弱点になりうる」

「中国共産党とオーストラリアとの関係が悪化すれば、オーストラリアの重要インフラは棄損される恐れがある。憂慮するべきだ」とジェニングス氏は指摘する。

香港の一国二制度の下で中国共産党当局は香港企業に影響を与えている。英BBCは、長江基建によるAPA買収案は、国の重要なインフラ管理不足への懸念が再浮上したと報じた。

ジェニングス氏は、香港は1997年に返還後、ますます共産党当局の影響を受けていると主張する。香港企業は中国共産党の利益を考慮しながら意思決定していると考えられている。

オーストラリア政府は2年前にも、国の安全保障への懸念から、長江基建と中国の複数の国有電力会社による電力公社オースグリッドの買収案を阻止した。同社はサウスウェールズの電力網を管理している。

(翻訳編集・佐渡道世)

関連特集: 国際