中国、地方債務を民間に転嫁か 傘下投資会社の破たんを容認する方針 

2018/09/25 更新: 2018/09/25

中国当局はこのほど、債務超過に陥った地方政府傘下の投資会社を清算し破産させる方針を明らかにした。現在、インターネットを介した個人間で融資を仲介するサービス「P2P」が相次いで倒産し、景気減速で民間企業が経営難に見舞われるなか、当局のこの政策が新たな金融・社会的不安を引き起こす恐れがある。

当局は13日、各地方政府に対して『国有企業の資産負債の制約を強化する指導意見(関于加強国有企業資産負債約束的指導意見)』(以下、指導意見)を通達した。そのなかで、「深刻な債務超過に陥り、償還能力を失った地方政府融資平台企業に対して、法に基づき破産重整または清算を実施する」と記されている。破産重整は、中国の3種類の法的倒産続きのうちのひとつだ。日本の会社更生手続きに相当する。

債券の発行を認められていない地方政府は経済成長の維持のため、インフラや不動産の開発を積極的に行なった。その財源確保のために、法の抜け穴として「融資平台」(融資プラットホーム)と呼ばれる投資会社を設立した。国債や土地使用権、国有企業の株式などを担保に、銀行や債券市場から資金を調達する。銀行の場合、地方融資平台への与信資金を、個人向けの資産運用商品、いわゆる理財商品を販売して投資家から集める。

不透明な地方「隠れ債務

中国財政部(財務省)が7月に発表した統計によると、今年6月末まで、全国の地方政府の債務残高は16兆8000億元(約268兆8000億円)。このなかには、地方融資平台の債務残高は含まれていない。融資平台の負債について、中央当局は地方政府の債務と認めていないため、地方政府の「隠れ債務」と見なされる。その全容はいまだ不明だ。

中国メディア・中国発展網の2016年8月9日の報道によると、金融当局である銀行業監督管理委員会の統計では、地方融資平台企業は約1万1000社ある。

また、経済ニュースサイト「華爾街見聞」は今年2月に、長江産業経済研究院の調査報告について記事を掲載し、融資平台1870社の2016年末までの負債規模が30兆2700億元(約484兆3200億円)に達したと報じた。

さらに、金融情報サイト「和訊網」(8月23日)によると、清華大学経済管理学院の白重恩・院長が率いる研究チームの調査では、17年6月末で、融資平台の債務残高が47兆元(約752兆円)であることが明らかになった。しかし、これはまだ地方政府の「隠れ債務」の一部にすぎない。

中国のセルフメディア「掃雷小組」が今年2月中旬に掲載した記事によると、中国当局は各地の隠れ債務規模の実状について調査に乗り出した後、危険な水準にあるとの結果を得たという。

これによれば、15年12月で、北京市西城区政府の債務残高は約38億元(約608億円)だ。しかし、これとは別に同政府は約198億元(約3168億円)の隠れ債務を抱えており、公表されている38億元の負債規模の5倍以上となっている。

内モンゴル自治区フルンボイル市が管轄するある県級市の場合、17年12月で直接負債総額は約3億元(約48億円)だが、隠れ債務がその5倍の15億元(約240億円)に膨らんでいる。

「掃雷小組」は、中国全国地方政府の隠れ債務が、少なくとも公表された数値の4倍であると試算した。

地方融資平台の破たんによる影響

地方融資平台の倒産で、融資先の銀行に新たな巨額の不良債権が増え、金融リスクが高まるほか、理財商品の大規模な債務不履行(デフォルト)の発生も予想される。P2P個人投資家に続き、膨大な損失を受ける投資家が続出するとみられる。

中国当局は15年から、地方融資平台のデフォルトと地方政府の信用破たんを回避するために、地方政府に対して地方債の発行を許可し、また3年内に高金利の地方債務を低金利の地方債券に交換する債務スワップ措置を実施した。しかし、当局が認定した高金利地方債務規模は15兆4000億元(約246兆4000億円)にとどまった。このうち、地方融資平台の債務は同様に含まれていない。

17年、金融リスク拡大を警戒した当局は、債務圧縮(デレバレッジ)政策を打ち出した。地方政府の隠れ債務を抑制するため、「地方債券が唯一の合法な融資方法」と定義した。今年始め、同政策の影響で天津市の地方融資平台などが相次いでデフォルトした。

9月13日に発表された新たな方針では、中国当局は、地方政府が地方融資平台で借り入れた借金を踏み倒す意図があると推測できる。これによって中国国内で金融恐慌が引き起こされることが明らかであるため、当局の真意について、専門家の間で憶測が飛び交っている。

いっぽう、同『指導意見』では、国有企業(地方融資平台)の資金補てん機制を完全化するのに、積極的に「混合所有制改革」(国有企業への民間企業の資本参入)を推進していくと強調した。

中国の全体主義体制では、民間企業が地元の地方政府との間で緊密な関係を構築することが多い。このため、地方政府の隠れ債務の弁済を民間企業に押し付けようとする狙いが見え隠れている。

9月18日、国家発展改革委員会など8つの中央政府機関は、国有企業に対し混合所有制改革の加速化に関す通達を出した。

(翻訳編集・張哲)

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