ロシアの「最大規模」軍事訓練、数字は水増しか=VOA

2018/09/12 更新: 2018/09/12

冷戦後のロシアにとって最大規模とされる軍事訓練「東方(ボストーク)2018」が、9月11日から開催される。兵士30万人参加という大規模訓練だが、数字の「水増し」を指摘する声もある。

この大規模な軍事訓練は4年に1度、極東と太平洋地域で行われ、西側に対して軍事力を誇示する狙いがある。今回、中国軍とモンゴル軍も参加する。

ロシアのショイグ国防相によると、兵士30万人、軍用車3万6000台、航空機1000機、軍艦80隻が参加するとしている。初参加の中国軍からは兵士3200人、軍用機900機が加わるという。

モスクワの専門家は、合同訓練の実施により、中ロが双方を軍事的脅威と見なさないことを意味すると指摘する。

しかし、西側の専門家はそうとらえていない。ワシントン拠点のシンクタンク、ケネン研究所の安全保障アナリスト、マイケル・コフマン氏は「この類の軍事訓練の数字は、しばしば誇張される。統計上でうそであると証明できる」

ボイス・オブ・アメリカ(VOA)の取材に答えたコフマン氏いわく、ロシア軍参謀部は各部隊に在籍する兵士の総頭数をかぞえているが、部隊が演習に送り込んだのは一部の兵士で、彼らは作戦のシステムを学ぶだけの場合もあるという。

さらに、ロシア軍はしばしば、過去の演習終了後の報告においても、参加兵士の数を水増ししてきたと指摘する。コフマン氏によると、2014年の「ボストーク2014」では当初10万人参加と説明したが、のちに15万5000人という数字を公式に発表した。「10万人では少ないと思ったのだろう」

他方、「軍事演習の規模を事前にどれほどかを示すのは困難だ」という専門家もいる。元米国国家安全委員会ロシア担当責任者であり、アーリントン拠点の海軍分析センター(CNA)のジェフリー・エドモンド氏によると「ある分析では兵士の数は制服軍人だけを数えるし、予備兵士を入れる場合もある」と述べた。「兵士の入れ替わりもあるため、数字で示すのは難しい」とした。

不透明な訓練内容

一週間に及ぶボストーク2018の演習内容は、ほとんど明らかにされていない。北大西洋条約機構(NATO)は、事実上の「最大規模の演習」と形容する。

2014年のクリミア併合から、バルト3国など東欧はロシアに強い警戒心を抱いている。米国やNATO、ウクライナ軍からなる2万2000人の兵士が、ウクライナ西部で軍事演習を行った。

しかしVOAは、これらの将校たちは、地理的に見て、ロシアの「アキレス腱」は極東にあると考えるだろうと報じている。

コフマン氏によると、ロシア極東の軍は「ユニーク」であり、モスクワから遠く離れた地域でインフラや人口もまばらな地域で、独自戦略を掲げ、一軍事組織を形成している。また、陸上部隊も数多く設置しているという。

同氏は、極東地域で行われる「ボストーク2018」の一つの見方として、この独特なロシア極東軍の潜在的な戦闘能力を図ることができると述べた。たとえば、ロシアが参加する大規模な紛争、ロシア本土に戦闘範囲が拡大した場合、中央司令部はどのようにコントロールしていくかを検証できるという。

「安全保障問題の上で、ロシアは常に欧州を意識している。しかし、米国の軍事力を反映させることのできる強力な同盟国は、アジア太平洋地域にある」と指摘した。

(翻訳編集・佐渡道世)

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