駐タイ中国大使館 公文書で圧力、世界的人気の中国文化の舞台を妨害

世界ツアーを展開する中華文化芸術の舞台「神韻芸術団」による2月のタイ公演が、公演の数日前にキャンセルになった。大紀元の取材で、中国大使館がタイ外務省に向けて、公演の中止要請と、神韻を中傷する公文書を送っていたことが明らかになった。

文書に記された日付は2016年12月23日。英語で書かれており、神韻芸術団誹謗中傷し、「中タイ関係に影響する」との理由でタイ政府に圧力をかけ、公演を取り消しを要求する内容だ。

神韻芸術団は2006年に米国ニューヨークで創立。「中国伝統文化の復興」を掲げ、世界ツアーを展開し、その高い芸術性から、ハリウッドの映画芸術関係者、アニー賞受賞の舞台女優らなど、実績のある芸術家から称えられている。2017年の巡回公演では130以上の都市で400余りの公演を果たし、のべ100万人近い観衆を動員した。1月には日本、韓国、台湾で公演し、いずれも満席に近い人気を博した。

神韻2017ツアー公演 鑑賞者たち
カナダ国会議員「神韻はこの世界に智慧を与える」   作家「魂が震え、命の弦に触れたよう」 欧州とラテンアメリカでも高い評価 

中国大使館は文書を通じて、中国共産党が迫害する気功法・法輪功について、今後タイで活動することを禁止するように求めている。この文書は同時にタイの国家警察と文化部にも送られていたことが、取材で明らかになった。文書は、「中タイ関係の維持」を名目として、タイ政府に「問題を重視して協力するように」と要求した。

神韻タイ公演主催団体代表・李さんは、「中国共産党はタイ政府にとんでもない圧力をかけた。タイは独立した自由国家で、中国共産党の無意味な圧力に屈してはならない。世界の国々のようにタイは神韻の公演を歓迎していた。タイ国民に幸せをもたらすことができる、この機会を失わせてはならない」と語気を強めた。

法輪功を取り上げた神韻 中国共産党は不正の暴露を恐れる

伝統文化の復興を掲げる神韻芸術団は日本をふくめ世界中の舞台で成功を収める。
(Shenyun Performing Arts PVへリンク)

神韻芸術団のホームページによると、公演の演目には法輪功をテ―マとした演目を「敬虔さ、慈悲心、善悪の応報、人生の意味への探索などのテーマにおいて」、取り上げてきた。

法輪功は真実性、善良さ、慈悲心の理念を指針とする精神修養法。中国体育当局の調べでは1999年には法輪功学習者は1億人を超え、人気を博した。儒教、仏教、道教の思想に基づく中国の伝統文化に立ち返ることを促してきたとされる。

しかし、中国の伝統文化とは全く対照的な体制と理念を掲げる中国共産党は、法輪功を迫害の対象とした。いっぽう、法輪功学習者は信念のもとづき、静かで平和的な手段で、中国共産党体制に見られる不当行為を中国国内外で伝え続けている。

期待されたタイ公演 海外からも問い合わせ 追加公演予定も

実現すれば、神韻芸術団のタイ公演は初めてとなる予定だった。バンコクの象徴的モニュメント「戦勝記念塔」の近くにあるアクスラシアターキングパワー劇場で、1月11日から15日までの公演が決定していた。

タイの神韻公演主催団体によると、チケットが販売されると、中国大使館はタイ政府や警察などの公的機関他、主催者と劇場に、手紙や電話などで、公演の中止を求めていたという。

主催側の代表・李さんは、タイ初公演となるはずだった神韻芸術団に寄せられた期待について述べた。「チケットを販売してから一週間足らずで、大部分のチケットが売れました。そして隣国からの問い合わせもあり、公演回数を増やす計画を立てていました」。

中国共産党は「正統な中国伝統文化の広がり」を恐れ、妨害

「中華民族の正統文化の復興」を掲げ、世界ツアーを展開する神韻の人気には、数年来、中国共産党当局はずっと各国政府の官僚に圧力をかけて、劇場に出演を取り消させる方法などで神韻を妨害している。

2015年2月、「追査国際」の調査報告によると、「外国に駐在する中国大使館や領事館などは、中国国内の共産党の迫害専門事務局『610弁公室』の協力のもと、神韻のスポンサーに対する嫌がらせ、チケットコールセンターへの集中的な電話での妨害、華人団体への脅迫、VIPに手紙を書く、法輪功学習者になりすます等の方法で神韻の出演を妨害している」と説明する。

韓国でも中国の圧力で公演がキャンセル

数千人動員の舞台が直前キャンセル KBSへ中国大使館の手紙とどく

 

韓国公共放送KBS本社内にあるKBSホールで、5月6~8日まで神韻芸術団の公演が予定されていた。しかし4日の裁判で、公演キャンセルが決定
(チョン・ギョンニム/大紀元韓国)

2016年、韓国の中国大使館はソウルKBS劇場に公文書を送り、神韻の出演を取り消すよう求めた。中韓両国の関係に影響するという理由で脅迫し、また巨大な利益でKBSを誘惑し、同公演はキャンセルとなった。

報道によると、韓国の中国大使館は蔚山、全州と京畿道に圧力をかけたが、当地の劇場と地方政府は大使館の要求を拒否し、神韻の演出を取り消す理由がないと表明した。

神韻芸術団はソウルでの事件に対する声明の中で、「過去の数年来、中国共産党は全世界でその領事館や大使館を通して直接各地の劇場と当地の政府に連絡し、神韻の出演を取り消すように求めているが『失敗』している。つまり、圧力で封じ込めようという手法を世にさらしている」と発表した。

他国の劇場 中国共産党の無理な要求を断る

その前にもアメリカ、スペイン、ドイツ、オーストラリアの多くの都市の劇場も中国大使館の脅迫を拒否したことがある。そして一部の劇場は、中国大使館や領事館の公文書を調査の証拠として、自国の法律機関に提出した。

英語大紀元(Epoch Times)の報道によると、2015年1月30日、シカゴの中国領事館の官僚は、間もなく神韻が出演するミズーリ州セントルイスのピーボディ・オペラ・ハウスを訪ねて、「米中関係に影響する」として神韻公演をキャンセルするよう求めた。また、領事館の官僚は法輪功を誹謗中傷した。劇場の責任者は、中国領事館の要求を断り、公演は予定通り行われた。

2014年2月、ドイツのポツダム広場劇場で神韻が出演する1カ月前に、中国大使館はポツダム広場劇場に神韻の4回の演出を取り消すように求めたが、劇場の責任者に拒否された。

2014年2月25日、スペインに駐在する数名の中国の外交官は、4月に神韻が出演する予定のカタロニア国立劇場に行き、神韻を誹謗中傷して劇場に神韻の出演を取り消すよう求めた。劇場はこの無理な要求を拒否した。現地紙『EL MUNDO』は4月7日、中国共産党が神韻の演出を妨害したことを報じた。スペインの神韻の主催者は、当地の裁判所で中国共産党領事館の外交官を告訴した。

中国共産党は、なぜ神韻を妨害するのか?

ベルギーのブリュッセルで2014年3月、中国・習近平国家主席の来訪に合わせて、神韻芸術団の広告を、中国国旗とベルギー国旗で隠そうとしている中国人(GEORGES GOBET/AFP/Getty Images)

神韻公演は、道家や仏教、儒教に見られる伝統的な古代中国思想と、普遍的な人間性、道徳的価値観の大切さを伝えている。いっぽう、中国共産党は無神論や欺瞞、暴力、闘争を基本としている。神韻が伝える「伝統的価値の復興」が実現してしまえば、今の専制政治体制が崩れかねない。

時事評論家・龔平氏は神韻の広がりについて「中華伝統文化は、中国人が誇りに思えること。神韻が世界に与えた影響に比べて、中国共産党の世界に対する行いは無力で、逆に自らの醜態を晒すことになった」という。

ドイツの有名な作家Sandra Maxeiner氏は「神韻は人々に古くて不変的な希望を与えている。それは美・真・善で満ちた神聖的で幸せな世界に戻ることです」と語った。カナダ元司法大臣アーウィン・コットラー氏も「神韻は人々に希望をもたらしている。その希望は真善忍の価値観に基づいている」と評した。

善悪の対峙を目撃する世界

時事評論家・龔平氏は次のように分析した。「神韻公演を妨害の裏には、中国共産党の人権侵害と、伝統文化の復興への破壊であり、同時に中共が全世界で経済的な利益で各国を思いのままに操り、各国に道徳を放棄させている。各国は警戒すべきだ」

「正義と悪が対峙するなか、政府、グループ、民間団体や個人も肝心な選択に直面している。強権に屈服し、原則を放棄すれば、道徳面で大きなダメージを受けるだけでなく、その地域の民衆に巨大な傷害や損失をもたらすことになる」。

(翻訳編集・青山 永成)